体験談 私の目はこれからどうなるのだろう

体験談

私の目はこれからどうなるのだろう

(70代 男性)

 段々と悪くなる眼を気にしつつ、どうしたら良いのか分からないまま日が過ぎて行くこの頃である。
2003年11月頃から眼のごろごろ感に加え瞼に異常を感じ始め、日差しの強い場所に出ると瞼がぎゅっと閉じてしまい、いくら開けようとしても瞼がぴくぴくするばかりで開けられないという状態が続いた。翌年3月井上眼科病院で重症の眼瞼けいれんと診断され、病名が分かったことでやや安心できた記憶がある。ちょうど仕事もリタイアし、体力づくりを兼ねたテニスを楽しもうと近隣の町にあるテニスクラブに入会したばかりの頃だったが、瞼が自由に開かなくなったため自動車の運転もテニスも出来なくなってしまった。それを救ってくれたのが先生に勧められたクラッチ眼鏡とボトックス注射だった。

最初のボトックス注射のあと、元のようには戻らないと分かりがっかりしたが、それでもその状態でどこまで出来るか試してみようと、車の運転については近くのスーパーに行くことから始め、その距離を少しずつ延ばして行った。また、テニスもクラブのオーナーに相手をしてもらって練習し、何とかやれそうな気がしてきてクラブの仲間入りをすることが出来た。
もっとも順調とばかりはいえない場面もあった。ある日車の運転中にくしゃみが出て、そのとたん両目が閉じてしまった。道は片側1車線の直線道路で30Mほど先に信号付き交差点がある場所で、前後に車が走っていることは分かっていたので急停車して後続車に追突されても危ないし前の車が赤信号で止まって追突しても危ないし、一瞬どうしようかと思ったが前の車が停車しないことを祈りつつスピードを落としてゆき左に寄りながら無事停車、瞼を手で引っ張りあげて運転を再開することが出来た。この経験からその後はくしゃみが出そうな時はあらかじめ手をクラッチ眼鏡のところにやり、くしゃみが出てもクラッチ部分で瞼を押さえ瞼が完全に閉じるのを防ぐことが出来るようになった。

テニスの場合、プレーが始まるとどちらかがポイントを得るまでは瞬きが出来ない。瞬きをすると目を開けるのに時間がかかりボールの位置が分からなくなりテニスにならない。ラリーが続くと苦しくなる。そんなことから瞬きの回数はどんどん減り、数十秒間目をあけたままというのも珍しくなくなってきた。
2005年ミュラー筋を縮める瞼の手術も受けた。手術後はかなり目を開けやすくなり喜んでいたが、日が経つにつれ効果が薄れて行き1年後には元に戻ってしまった苦労はあったものの、長距離運転を望まなければ普段に近い生活を取り戻していたと思う。2007年にはボランティアに加わり、友の会活動に参加することが出来るようになった。

ところが2009年10月末左目に異常が発生、視野の中に大きな影が生じた。井上眼科病院に連絡し診察を受け、すぐに入院となったが既に手遅れ、1・2あった左目の視力が入院時には0・3程度に落ち込み、視野も中央が大きく欠けてしまっていた。診断は虚血性視神経症(眼の中の微細血管が梗塞を起して血流が止まり神経が死んだ)といわれたがよく分からない部分もある。
視野の減少はその後も続き95%以上視野は失われている。視力検査をすれば0・07程度の数字は出ても、ピンポイントで検査マークを見ているだけで周辺は真っ暗、実質的に左目は失明状態となっている。
片目になると遠近感が十分でなくなる。車の運転も細い道ですれ違うとき壁との距離がつかみ辛くなり、車線のはっきりした広い道を走るよう心がけた。しかし、左目が見えず右目の瞼も自由にならない私の運転を妻があまりに心配するので最近は殆ど運転をしなくなっている。

テニスも片目では距離感がつかめない。3次元でボールを捉えていたのが2次元の世界になり打点を変えて対応しようとしたがそれでも空振りが多くなる。何とか1年半ばかり片目で頑張ってみたが、やはり思い切ったプレーが出来ない、今まで対等だった相手とまともに戦えない等が続くと楽しさが失われてしまう。遂にテニスを諦め、的の動かないボウリングへと趣味を転換した。
左目の視力を失って約5年、左目は役に立っていないのに眼圧が高く、時に炎症を起こす。毎月診察を受け7種類の目薬を毎日点眼しているが点眼回数や点眼の間隔が必ずしも同じでないため点眼作業も結構時間と気を使う。そしてパソコンを長くさわっていると何故か使っていない筈の左目が痛み出す。

最近は右目にも異変の兆しを感じつつある。左目がやられたときから右目に来ないよう血流を良くする薬を飲んでいる。今までも若干飛蚊症の気はあったが、今年8月今まで見たことのない大きな黒い模様が右目視野に現れ、やがてそれが視野の中で溶けて流れ落ちて行くという今まで経験したことのない現象があった。すぐに井上眼科で診察していただいたが、網膜に異常はなく飛蚊症の一種であろうとの診察だった。
もう一つ気がかりなことはボトックス注射の効果が感じられなくなってきたことだ。ずっと3月半ぐらいの間隔で注射をしていたが、注射の後の診察時に書くアンケートはいつも注射の前後で変わりがないというものだった。最初の効果が変わりなく持続されているのなら素晴らしいことなのだが、実際には年が経つにつれ瞼に力が入りにくくなり目を開けにくくなっている。もっと間隔を延ばし、もっと悪くなってから注射を受ければ効果が確認できるかもしれないと思い間隔を4ヶ月、更に5ヶ月と延ばしてみたが相変わらず注射前後の差は感じられない状態が続いている。

もう一度瞼の手術を受けようかとの考えは度々浮かんでくるが、最初の手術での左目麻酔注射の痛みがあまりに強烈だったため二の足を踏んでいる。
先生からは自転車も危ないからやめた方がよいと言われているが、行動半径が小さくなるので何とか乗り続けている。
この先どうなってゆくのか、どんなことをすれば悪化を食い止められるのか分からないが、今出来ることに眼を向けて前向きに生活していければと思っている。

 

 

 

 

 

 

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