体験談 片側顔面けいれんの手術をして

片側顔面けいれんの手術をして

       (50代 女性)

 私は長い間、この病気に苦しめられて来ました。15・16才の頃、左目がピクピクするのが始まりでした。眼科を受診したり、内科を受診したりしていましたが、少しも改善されませんでした。不快を抱えながら結婚し、その後出産、そして家族の介護などに追われた生活でした。平成12年に母が他界し、その事で疲れ、ストレスもあり、左顔面のけいれんが酷くなりました。左目のピクピクも頻繁に起こり、左側の顔も左上に引き上げられて、鏡の中の自分を見てひどい顔に驚きました。

丁度其の頃のこと、井上眼科の若倉先生の記事が新聞に掲載されました。症状が私の場合と似ていたので、早速予約をして受診しました。そこで私の病気が「片側顔面けいれん」との診断をして頂き、私の病気に名前が付いたのです。そしてボトックス治療が始まりました。最初に注射を受けたのが平成13年。以来平成24年までの11年間、4ヶ月毎にボトックス治療を受けました。しかし、徐々に効きめが薄れていくように感じていました。このままで良いか考える事が多くなりました。手術という方法もある事を知っていました。そして何度か思い切って手術をと考えた時期もありました。しかし、なかなか決心がつきませんでした。若倉先生が「もし手術をするなら60才頃までが良い」と仰っていたのを思い出し、少し焦りを感じ始めていました。平成24年6月頃、ボトックス注射を受けに行った時に若倉先生に相談しました。先生が「決心したのなら紹介状を書くよ」とお話し下さり、東京日本医大の田草川豊先生を紹介して下さいました。

早速、田草川先生の診察を受けました。様々な検査をして、私は是非、年内の手術を希望しました。ところが東京日本医大ではもう予約が一杯で年内手術は出来ないと言うことでした。その後、田草川先生が手術だけ行っている病院があるとお聞きしました。日本医科大学千葉北総病院でした。田草川先生より紹介をして頂き、一度電話して、日本医大の梅岡克哉先生と話しをしてほしいと言われ、私と主人は下見をしながら病院まで行きました。その日の夕方、梅岡先生にお会い出来、「田草川先生から紹介されました」とお話させて頂きました。「次回来院の折は、細かい検査をしましょう」とのことでした。そして、順調に事が進んで行き、平成24年11月7日に手術が決まりました。

心の中は、手術を受けると決めてから不安もありましたが、何事もトントン拍子でここまで事が進められてきたので。「今が手術をする時期だ」と自分に言い聞かせ、「大丈夫、絶対成功する」と心に暗示をかけました。手術の前日に入院、左耳の後ろの髪をバリカンで剃りました。理容師の方は慣れていて、「写メ撮りますよ」と言ってくださいました。今でも私の携帯にその時の記録が残っています。

手術は田草川先生と梅岡先生が執刀して下さいました。左耳の後ろの頭蓋骨を切開し、小脳と頭蓋骨の脇を通り頭の中央あたりまで行き、血管と神経が絡んでいるのを離す手術をしました。私の場合、絡み方が一般的では無く、3千人~4千人に一人ぐらいと言うくらい変った絡み方だったとのことで、手術時間も予定の4時間ぐらいが、実際は5時間を過ぎていました。手術が終わり、梅岡先生が「手術が終わりましたよ」と声をかけてくださいました。「ありがとうございます」と言ったのですが、その後すぐに気持ちが悪くなり、吐き気がして苦しみました。術後3日間は寝たまま、めまい、吐き気、熱、物が二重に見えてとても辛い日々でした。4日目から食事も出ましたが気持ちが悪くて食べられませんでした。看護師さん達から「何が好き?」と聞かれても「何が好きだったかな」と思うほどでした。そして、身体的には、左耳がこもっていて、聞こえが悪く、顔面マヒを起こしていました。梅岡先生が毎朝見に来て下さり、「日にちが経てば治るから大丈夫ですよ」と言って下さったので心強く思いました。7日目ぐらいから院内を少しづつ歩行練習をするようになりました。頭痛、めまいはありましたが気になっていた顔面のけいれんはなくなりました。

2週間で退院しましたが、家に帰ってきてから本調子になって来たのは1年が過ぎてからです。今現在も疲れると頭痛がしたり、頭がフラッとします。それと筋力低下です。元々体力が無い方なので・・・朝のテレビ体操や無理なくウォーキングなどやりながら体力向上を目指して頑張っています。手術が成功したからこそ顔面けいれんが治って良かったと感じています。誰でも手術をした方が良いとは言えません。夫々の患者の症状その他が違うので、絶対大丈夫とは言い切れません。
一大決心する時は、その時の運と本人の強い意志も大事だと思いました。私の体験をお話したことで、この病気で悩んでおられる方々に、少しの希望と勇気を感じて頂けたら嬉しいことと思います。

 

Copyright(c) 2021 眼瞼・顔面けいれん友の会 All Rights Reserved.